経済的発展ステージによって、インフラの需要は変化していきます。アジアを牽引してきた日本は円熟期〜停滞期で、老朽化するインフラの維持管理や更新技術開発がメインになっています。一方、飛躍的成長期の国では大規模インフラの新設技術開発が必要です。さらに、経済初期段階の国々では今後10年間でインフラ整備が急速に進むことが予想されます。それぞれのニーズを的確に捉え、インフラ整備を技術面から支える国際的な人物が、これからのアジアでは強く求められることでしょう。この現状を踏まえ、本プログラムではアジアの社会基盤を支える、高度な専門性を持った人材育成を目指します。
長崎大学学長永安武
日中韓の大学院博士(前期・後期)課程の「ダブル・ディグリープログラム」。日中韓及び複数のASEAN諸国の大学で、オンラインと留学を融合させた「ハイブリッド型短期留学プログラム(3ヶ月間)」。日中韓のいずれかの大学間で単位互換制度を伴った短期留学、単位互換を伴わないインターンシップを構築する、「ASEAN拡張型短期留学プログラム」。これら3つの交流プログラムを実施します。
さらに「国際コラボレーションラボ」を設立すると共に「キャンパス・アジア同窓会」を発展させ、情報発信を行います。
2か月のオンライン留学と各国1週間ずつの現地留学を組み合わせたプログラム
各国の大学が持ち回りで、ホスト国の学生が企画・運営に携わる
日本、中国、韓国より各8名/年シンガポール、ラオスより各2名/年をそれぞれ派遣
ASEAN各国の特徴に合わせた拡張型短期留学プログラム
ラオスより日本・中国・韓国へ各1名/年を短期留学プログラムへ派遣
日本、中国、韓国よりシンガポールへ各1名/年をインターンシップへ派遣
1857年にオランダ海軍の軍医・ポンペが開いた日本最古の医学校「医学伝習所」が起源。文教キャンパスにある教育学部・水産学部・工学部・薬学部・環境科学部・多文化社会学部・情報データ科学部に、坂本キャンパスにある医学部・歯学部、片淵キャンパスに所在する経済学部の全10学部。総生徒数は約1万人で、留学生は49の国や地域から約500人が在籍しています。
本学、千葉大学、新潟大学、金沢大学、岡山大学、熊本大学と国立六大学連携コンソーシアムを形成するなど、教育研究領域の高度化・国際化を目指し、国内外のトップレベルの大学と連携を強化しています。
本部がある文教地区は長崎中心部から北へ4キロの場所。電車やバスでのアクセスが良く、近くに商店街もあり、生活に便利です。
大学の世界展開力強化事業の第2モードで、本学工学部では38人の日本人学生を派遣し、61人の外国人学生を受け入れた実績があります。学生派遣の際には毎年複数回の説明会を開催し、留学中の生活や研究活動などの詳細な内容紹介、留学成果発表会の開催、パンフレットやチラシ、HPでの情報周知などを行い、留学全般に関する相談や支援体制を構築しました。指導教員や国際コーディネーターによるサポート体制も整えています。
留学生の受け入れに関しては、豊富な経験を持つ専属国際コーディネーターを配置。本学の留学支援課には中国・韓国出身の職員や英語に堪能な職員が連携して支援体制を整備しています。また、長崎県内の産学官が連携して設置した「長崎留学生支援センター」との協働により、イベントの開催や「留学生のためのビジネス日本語コース」の開講などで、幅広い支援を行います。さらに「キャンパス・アジア同窓会」を活用し、情報発信を続けます。
中国にある大学の中でも最も古くに設立された名門大学の一つで、国内主要第一級大学21校にも選ばれています。哲学、経済学、法律学、文学、歴史学、自然科学、技術工学、経営学、医学の9つがメイン。総学生数は約7万人で、4600人以上の常勤講師が在籍する大規模な総合大学です。
山東大学の本校は山東省の省都である済南にあり、3.8平方キロメートルという広大な敷地にキャンパスが広がります。ほか、黄海に面した威海(ウェイハイ)や青島にもキャンパスが。
国際交流も盛んで、1000人ほどの留学生を受け入れ、アメリカや日本など30以上の国・地域の約200校と学術交流協定を結んでいます。
山東大学とは2007年に共同研究を初めて実施して以降、研究者や博士課程学生を毎年受け入れてきた経緯があり、2010年には学術交流協定及び学生交流の覚書を締結。同年の文部科学省事業でコンソーシアム提携校として山東大学から毎年2人の入学者を受け入れ、このうち2人が博士後期課程へ進学するなどの交流実績を上げてきました。また、国際シンポジウムの開催や教員間の交流など幅広い活動を活発に推進し続けています。
本事業に向けた準備としては、「ダブル・ディグリー制度に基づく長期留学(博士前期課程)」を継続するとともに、新たに「ダブル・ディグリープログラム(博士後期課程)」を構築。覚書と実施要項をすでに締結し、実施体制を整えています。さらに山東大学主導の日中韓+ASEANの大学間に「国際コラボレーションラボ」を設立する計画も。
成均館大学はソウル特別市鐘道区に本部を置く大韓民国の私立大学です。歴史は古く、今から620年以上前の1398年に設立された朝鮮王朝の最高教育機関成均館が母体。東アジア最古の大学として知られています。37もの大学部・大学院部があり、総学生数約3万5000人。留学生も2500人と多いですが、日本人がまだ少ないようです。ソウル特別市に人文社会科学キャンパス、スウォン市(水原市)に自然科学キャンパスがそれぞれ置かれ、医科大学や薬学大学、工科大学などはスウォン市にあります。ここは湖が美しい中核都市で、ソウル特別市から南に35キロ、バスや地下鉄を使って約1時間の場所です。中心市街地には「華城」の城壁に取り囲まれた城郭年があり、ユネスコの世界遺産に登録されています。
成均館大学とは本学学生の韓国語語学研修実施の受入先候補として2006年に学術交流協定及び学生交流に関する覚書を締結。2016年の文部科学省「大学の世界展開力強化事業」の第2モードが採択された時にはコンソーシアム提携校として双方向の交流を展開。事業期間中に受入・派遣交流プログラムを実施し、のべ61人の学生が交流を行いました。さらに2018年度には成均館大学の金教授が本学工学研究科の社会環境デザイン工学コースの客員教授として赴任し、共同研究の推進にあたりました。
大学の世界展開力強化事業(第2モード)を中心に、教員・学生間の交流を活発に行っており、今後も質の高い、双方向からの実践的交流が予定されています。本事業の展開などに関する意見交換はすでに複数回実施していて、「ダブル・ディグリー制度に基づく長期留学(博士前期課程)」を継続する覚書と実施要項も締結済み。事業開始後はプログラムの実施に向けて詳細な協議や準備を推進し、2022年度中に実質的な学生交流が展開できると考えています。
南洋理工大学はシンガポールで2番目に大規模な大学で、約3万人の学生と1万人ほどの教職員が在籍しています。QS世界大学ランキング2022年度版では世界12位と評価され、アジアナンバーワンの工科大学として優秀な人材を輩出している大学です。メインキャンパス(ユンナンガーデンキャンパス)は200ヘクタールと広大で、シンガポール最大の規模。ジュロンウェスト街に隣接していて、建物は新しく開放的なため、学生からも人気です。
1975年以降、中国語学科以外の全ての授業が英語で行われています。シンガポールでは人口密集都市部の地下空間の開発利用や社会基盤施設の維持管理が重要課題であり、南洋理工大学環境土木系の教員が世界的にも高いレベルの成果を上げています。シンガポールという多様性に富んだ環境のもと、質の高い学びに集中することができます。
本学と南洋理工大学の交流は2000年に国際会議での情報交換や研究室訪問から始まりました。2004年度日本学術振興会外国人招へい研究者(短期)事業の採択では、土木工学科のJian ZHAO准教授を長崎に1ヶ月間招へいし、特別公演、現場視察、研究室ゼミ参加、研究打ち合わせなど、密な交流が行われています。その後、専門分野の国際会議(2006年、2014年、2015年、2018年)の運営を協力し合い、信頼関係が一層深まっています。
大学学術交流協定及び同協定に基づく学生交流の覚書の締結については、現在準備が進められています。本事業における連携に向け、コンソーシアムの中心連携大学として、今後も双方向の実質的な交流を展開する予定です。2020年度から南洋理工大学の担当者と共に、本事業に関する意見交換を複数回実施。日中韓の「インフラ人材育成コンソーシアム会議」の運営体制を立ち上げ、オブザーバーとして参加し、2022年度までに本事業内の学生交流に関する覚書と協定書を締結する予定です。
ラオス国内における最高学府として、ラオスの社会・経済発展に必要な分野の高等教育の提供、自然科学及び社会科学研究、国の芸術・文化・伝統の保守、学術支援の社会提供を担っています。1年間の教養課程の後、各学部で4年間学ぶという、5年制がとられています。
ラオスの首都ヴィエンチャン市にあり、市内に複数のキャンパスがありますが、メインはドンドーク校。工学部、農学部、環境科学、自然科学部、森林学部、建築学部、文学部、教育学部、経済経営学部、法学部、社会学部、水資源学部、スポーツ科学部の13学部と、2つの研究所、大学病院、少数民族学校などで構成されています。開学以来多くの職業人材を輩出しています。
ラオス国立大学との交流は独立行政法人国際協力機構(JICA)がラオス国公公共事業・運輸省に対して実施した道路維持管理に関する技術協力プロジェクトに本学の工学研究科の教員が参加したことが始まり。その後、学術・研究領域も含めた情報交換を継続し、2019年にラオス国立大学工学部(土木工学科)との共同研究課題が「土木学会インフラマネジメント技術国際展開研究助成」に採択されました。現在に到るまで博士後期課程留学生の研究活動派遣や共同実験など、本格的に学術・研究交流を行っています。
さらなる交流体制の構築に向け、「大学の世界展開力強化事業(日中韓の大学連携によるインフラストラクチャーを支える人材育成事業)」(第2モード)においても長崎大学で開催した国際シンポジウムにラオス国立大学から教員3人を紹へいしました。本事業に向けた準備として、共同研究者である教員をラオス国立大学側の事業担当者として委任し、2020年度から本事業への意見交換を複数回実施。2022年までに本事業内の学生交流に関する覚書と協定書を締結する予定です。